夜も更け、さて寝ようかと灯りを消した途端。
コツコツ、コツコツ。小さくドアをたたく音。
「どなたですか?」
ドアに耳を近づけ、気配を探れば聞こえる衣擦れ。
私は少しだけ笑って、細心の注意を払ってそっとドアを開ける。
「こんな夜更けにどうされたのですか、姫様?」
「Trick or treat!お菓子をくれなきゃイタズラするよ?」
目の前には、大きなシーツの固まりがゆらゆらしている。
思わず吹き出しながら、その頭の部分をぽんぽんたたいて差し上げた。
「姫様。お戯れもほどほどに」
「私は姫様じゃないわ。クリフトを呪いに来たお化けよ」
「……そんな格好で?」
シーツの下の“お化け”はこらえきれずに肩を振るわせている。
夜の静寂の中、こんなところで爆笑されるのも私にとっては甚だ迷惑。
「仕方ありませんね。悪い子にはお仕置きです」
私は布の固まりごとぎゅっと抱きしめ、素早く部屋の中に引っ張り込んだ。
身をひるがえして、背中でドアを押して閉める。
「それで、どんなお菓子が欲しいんですか?」
真っ暗闇の中、私はあなたの耳元で囁いた。
白い“お化け”は私の腕の中で身をよじらせる。
「ねえ、……」
「え?なんと仰ったのですか?」
「私の欲しいものは、ね」
あなたの熱い息が、私の胸を温める。
「……欲しいものは?」
「クリフトのくれる甘いもの、全部」
私は低く笑って、あなたを抱く腕に力を込めた。
「全部をお渡しするには……そうですね」
左手であなたの腰を抱き、右手でシーツを少しずつ引きずり降ろす。
「今夜一晩中かかっても、まだ足りないでしょうね」
続き→【
2:アフターハロウィン/very bitter ver.】
※激苦注意